デジタルとフィジカルとを横断し、
結合する創造性 = Fab(ファブ)




1990年代に最先端のインターネット環境を構築したSFCは、デジタルスキルを獲得した、さまざまな分野のクリエイターを輩出してきました。2010年頃から、電気自動車、3Dプリンタ、セルフビルド建築、ウェアラブルファッション、ソーシャルロボット、ヘルスケアデバイス、ドローン農業など、デジタルやインターネットの力を、物質的な「モノ」の世界と結びつける活動が盛んになっています。

現代重要なことは、「デジタルな世界(情報世界)」と「フィジカルな世界(物質世界)」をひとりひとりが行き来しながら、2つの世界をつなげるモノやサービスをつくり、「まずは動かしてみる」というプロトタイピングの姿勢を獲得することです。デジタルとフィジカルの垣根を超えて自由に横断し、自在に結合すること。そこで必要となる「創造性」を「ファブ(FAB)」という言葉に託し、キャンパス全体として、すべての学生がその能力を高め/深めていくための仕組みを用意することにしました。

昨今、SFCキャンパス外にもさまざまなデジタルファブリケーション施設やファブラボ、ファブカフェ、さらに大型のメイカーズ工房などが広がっています。しかし今回のファブキャンパス計画は、単に「つくる」環境だけを用意して終わるものではなく、さらに「その先」を視野に入れています。

つくったものをキャンパスに設置して長期間実験的に「つかう」ためのルールメイキング、そして、使い終わったものを適切に「こわし」、一部は分解して資源に「もどし」、循環させるルールメイキング。そして「つくってみて、わかったこと」の情報をキャンパス全体でシェアする情報のシステムをともに実装していきます。

「つくる」「つかう」「こわす」「もどす」「わかる」の5つのサイクルを、自ら開発したICTシステムを運用しながら、キャンパス全体をスマートな「循環型」ファブリケーションの実験場として推進している大学は、世界的に見てもまだほとんど例がないものです。わたしたちはここから、未来の大学の姿を発信していきたいと思います。

(c) 2016.4.1 慶應義塾大学SFCファブキャンパス委員会


デジタル刺繍ミシンや3Dプリンタのような「やわらかな」ものづくりから、電子工作やロボットのようなIoTデバイスの制作、さらには建築用の大型ロボットアームや大型CNC、
金属溶接といったハードな作業まで、多彩なファブリケーション機器を3つのレイヤーに整理し、キャンパス内に分散配置しています。

レイヤー1 (入門ファブ)
キャンパス中心部

メディアセンターFabSpaceにはStratasys社の3Dプリンタ"Makerbot"12台を中心に、3Dスキャナ、デジタル刺繍ミシン、アイロン、レーザーカッター、ペーパーカッターが常備されており、小物やファッション系のものづくりができます。FABコンサルタントのアドバイスを受けることも可能です。

SBCセンターは、木製の机で工作作業ができるほか、グループワークや制作成果の展示、講評会にも利用することができます。

レイヤー2 (発展ファブ)
οアトリエフロア、λ特別教室

オミクロン2Fは「アトリエフロア」と呼ばれ、ファブスタジオ、建築アトリエ、ロボットアトリエ、電子工作アトリエをそれぞれ設置します(2016年度に順次整備を進めます)。

特別教室のコンピュータには、建築系・機械系・プロダクトデザイン系の3Dソフトウェアがひととり整備されています。また大学生協とも連携し、工作に必要な材料やツール、電子部品等の取り揃えを順次進めています。

レイヤー3 (大型ファブ)
未来創造塾SBC、情報基盤センターZ棟

未来創造塾SBCには「DFF-W(デジタルファブリケーションファクトリー"ウッド"」が、ゼータ棟には「DFF-M(デジタルファブリケーションファクトリー"メタル"」が設置され、本格的なものづくりをサポートしています。

大型ロボットアームKUKA、大型CNCであるShopbotの利用から、旋盤・ボール盤・溶接作業までを行うことができ、建築や自動車の実寸大の制作ができます。騒音や粉じんが出ても問題のない本格的な工作環境を用意しています。

Fab Campus Map
  • 湘南藤沢メディアセンター1F ファブスペース

    3Dプリンタ ("Makerbot"12台 + "MF-1100"1台)、3Dスキャナ ハンド型2/デスクトップ型1、カッティングマシン 紙/布向け3台、デジタル刺しゅうミシン 2台、職業用ミシン 2台、レーザーカッター 1台。樹脂系のプロダクトデザインから、布を扱う刺繍、テキスタイル、ファッションに最適。

    SBCセンター (スケッチ、工作、展示、講評)

    未来創造塾 SBC(Student Build Campus) のパビリオンとして、展示や会議、学生の活動場所として利用できる。木製の机は工作作業にも最適。また、SFC内でつくられる作品のギャラリーとしての利用も可能。

  • ο建築アトリエ / 建築系収容棚

    建築系のスタジオ科目を履修している学部生が製図や模型製作を行うための特別教室です。

    ο電子工作アトリエ

    回路基板作成用ミリングマシン、デジタルオシロスコープ、デジタルマルチメータ、ファンクションジェネレータ、ユニバーサル電源、直流安定化電源、はんだごて、ペンチ、ニッパ、はんだ、線材等の提供。

  • οロボットアトリエ / ファブスタジオ

    レーザーカッター(予定)、実験用ロボット(NAO、LEGO mindstormsなど)、はんだごて、ペンチ、ニッパーなどの工具。

    κ,ε,ι,ο,λ特別教室 (コンピュータルーム)

    コンピュータには建築系・機械系・プロダクトデザイン系の各種3Dモデリングソフトウェアがインストールされています。

  • DFF-M (Digital Fabrication Factory-Metal) 金属加工工房

    シャーリング、フライス盤、ボール盤、サンドブラスター、TIG溶接機、MAG溶接機、グラインダー、CNC加工機(MDX-540A)、基板加工機(ProtoMat S63)、リフロー炉(ProtoFlow S)、カラー3Dプリンタ(Projet 4500)、タップダイス、ストレッシャー、定盤、ハイトゲージ。

    DFF-W (Digital Fabrication Factory-Wood) 木材加工工房

    大型CNC加工機(ShopBot社 PRSalpha96-48)、大型レーザー加工機(Universal社 ILS12.75)、大型ロボットアーム(KUKA社 KR16-2)、コンターマシン、ベルトサンダー。

※各施設の利用方法、利用時間の詳細は「ファブキャンパスガイドブック(PDF)」を参照してください。

SFCで行われているデジタルファブリケーションにまつわる日常のまなびの様子を、学生自身が映像化したオンライン教育ムービーです。

オンライン講座 Moocs (NTT Gacco「3Dプリンタとデジタルファブリケーション(キャンパス編)」) 提供コンテンツ |  Youtube再生リスト 

Mozilla Japanが開発し慶応大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボが運営している、「ものづくり制作日記共有システム」です。 ものづくりのはじまり(着想)から、おわり(つくりかたの公開)まで、一連のプロセスを支援しており、全国の大学やワークショップ等でも利用されています。

慶応大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボが開発中の3Dプリント用データ検索エンジンです。インターネット上からすべての3Dデータをクロールして インデックスをつくっており、その数は最終的に100万を超える予定です。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを用いて、他人の著作権を 侵害しない3Dデータの流れ(交通整理)を動的に処理する役割も担っています。

さまざまなメーカーのレーザーカッターや切削機が乱立し、それぞれに応じた異なるソフトウェアをひとつひとつすべて覚えるのが難しくなってきています。FabCamでは、ウェブ上にあるひとつの統一エンジンだけで、 キャンパスにあるあらゆる加工機が制御できることを目指して開発が進められています。